fc2ブログ

皇室に関する諸問題を検討するブログ         

≫ EDIT

婚姻後の女性皇族のお立場をめぐる最近の議論について②

 前回のエントリーで述べた、政府が検討していると報道されている、女性皇族が結婚で皇籍離脱した後も、国家公務員として公的立場から皇室活動に当たる案(以下「国家公務員案」という。)の問題点について、具体的に述べていきたい。

第一 皇族数減少の解決策にならない

 国家公務員案は、女性皇族が婚姻とともに皇族の身分を離れることを大前提として案であり、いわゆる「女性宮家」の創設を否定する立場であるため、皇族数を確保する方策としては、旧皇族復帰などによる皇族子孫の拡充を図る方策が別途必要となる。
 当ブログでは、いわゆる「女性宮家」の創設を一定の条件の下で容認するとともに、旧皇族及びその子孫のみで構成される「旧宮家」の皇室への編入については、実現に向けて困難があるとしている。一方で、旧皇族の男系子孫が、①女性皇族との婚姻によって、又は②皇族の養子として、皇籍を取得することは認められるべきであると考えている。
 このうち、①は、女性宮家創設を容認することを前提とした案であり、女性宮家創設に反対する立場からは根本的に相容れない案であると考えられるが、②については、一定の条件の下で実施するのであれば、女系皇族の誕生を招く可能性はなく、女性宮家創設に反対する立場においても受容可能な案であると考えられる。
 女性宮家創設を容認しない現政権において、今後講じうる皇族数確保策としては、旧皇族の男系子孫の選択的復帰や「旧宮家」そのものの復帰には課題が多いことに鑑みれば、「養子の解禁」に焦点を絞って検討することも一案なのではなかろうか。

第二 皇室活動の担い手を確保する方策として根本的に不十分
 
 皇族の身分を離れた女性皇族が「国家公務員」などの身分により皇室活動に参画することについては、下記のような問題があり、導入には慎重を期すべきである。このような仕組みを導入するよりも、皇族数を確保するための有効な方策を早急に講じ、「正規の皇族」を確保・拡充することに専念すべきである。

1.活動に関する問題
 (1)活動の範囲に制約
 現在の皇室の御活動内容を踏まえれば、政府の要請に基づく公務は一部であって、民間からの願い出によるものや、天皇・皇族御自身の発意に基づくものも存在するが、国家公務員案においては、「元女性皇族」である「国家公務員」に何らかの「皇室活動」を行っていただき、「公費」によって謝礼の支払い及び人的・金銭的サポートを行うものと考えられるため、その活動は政府の要請によるものが原則とならざるを得ないのではないかと考えられる。このように考えた場合、当該「国家公務員」が果たせる「皇室活動」は、政府主催の行事への出席などに限定され、位置付けが曖昧な公務については、常に「なぜそれを当該国家公務員に行わせる(行っていただく)のか」という説明責任が発生することが予想される。そもそも、一般論として、「皇室活動」は、天皇・皇族が行うから、それを「皇室活動」と称しているのであって、個々の活動を分解し、個別具体的に「国家公務員」に委嘱することは、「皇室活動」の本来的性質にそぐわない行為であると考えられる。

※政府の支援の対象として認められるか議論の余地のある行為
 公費によって「国家公務員」に実施させることについて、政府としてその必要性を問われることが想定される。
 ・皇室行事(儀式、行事、宮中祭祀)への参列
 ・天皇の公的行為の補助(国賓の歓迎式典、宮中晩さん会への陪席等)
 ・地方公共団体、民間団体等主催の行事、願い出に基づくお出まし

 (2)称号の問題
  (ア)日本国内で生じる問題
  「論点整理」においては、「内親王」「女王」の称号を保持することは、憲法上問題があるとして退け、その代わりに「皇室輔佐」や「皇室特使」といった称号を付与する案が示されている。また、皇籍を離れているため、当然「殿下」の敬称も使用できない。
 現実問題として、政府主催の式典等に出席いただいた場合等の呼び方として、「皇室輔佐・黒田清子氏」、「黒田皇室輔佐」、「皇室輔佐の黒田清子さん(「さま」ではない)」などとなることが予想されるが、これでは、敬称が法的に整備されている天皇・皇族と比べ、当該「国家公務員」に対しては尊崇の念を表現しにくく、国民にとっても違和感を拭えないものと考えられる。

  (イ)外国との関係で生じる問題
 当該「国家公務員」は、天皇・皇族の名代として、政府の要請に基づき外国を訪問することも想定される。特に、これまでにも述べたとおり、王族の葬儀など急に発生する外国訪問には、天皇に代わり皇族が対応してきたところであり、これを「国家公務員」に委嘱することも考えられる。この場合、日本国及び日本の皇室を代表する立場として訪問することになるが、当該「国家公務員」の肩書が問題となることが予想される。「皇室輔佐」を単純に英訳すれば、「the assistant for Imperial Family」となるが、これでは尊い立場にある者とは到底認識されない。また、皇籍を離脱しているため、「Princess(内親王、女王)」の称号も、「Her Imperial Highness(殿下)」の敬称も使用できないと考えられる。このような「国家公務員」は、国際的に見ても奇異な存在であると考えられ、「正規の皇族」と同等の役割・効果を果たし得るとは考えにくく、皇室による国際親善の一翼を担うことは困難であると考えられる。

 (3)国民感情
 皇室活動は、上に述べたように、 「何らかの立場にある者が出席し、挨拶する」という行為自体に意義があるのではなく、「そこにお出ましになる方が、天皇・皇族である」という人物に着目した価値を有するものであると考えられる。この観点からは、皇族でない者に「皇室活動」を担わせたとしても、皇族と同等の意義・効果を果たすことは困難であると考えられる。
 具体的には、「永久的に皇族である者」に対する尊崇の念と、「その時だけ皇族的役割を果た民間人(国家公務員)」への尊崇の念は自ずから異なると考えられる。
 また、このような国民感情を背景に考えた場合、従来の皇室活動を分解し、一部を「国家公務員」に担わせることは、皇族による活動と、皇族ではない者による活動を、政府として同一の価値として扱うことになり、従来の皇室活動自体の価値に対する疑義を想起しかねないと考えられる。

2.元女性皇族御自身に関する問題
(1)支援の不十分さ

 国家公務員案における報酬や人的・予算面のサポートについては、その趣旨に鑑み、人に着目した定額支給ではなく、公務単位となる可能性が想定される。
 しかし、この場合、皇族は、皇族費の支給、職員の配置、宮邸・専用車の付与等を通じ、皇族としての「品位保持」が図られているのに対し、「国家公務員」には「働いた分」の報酬や支援しか提供されないとすれば、品位保持の面で不十分であると言わざるを得ない。
 繰り返し述べているとおり、「皇室活動」は、皇族としての品位が保持されている者によって行われることに価値があるものであり、担い手の品位保持に支障が出るようであれば、活動の価値自体が損なわれることにつながりかねない。

(2)元女性皇族の意思の問題
 前述の「支援の不十分さ」とも関連するが、結婚後、一般国民として平穏な生活を望む元女性皇族がいることも考えられるところ、身分は民間人でありながら、公人として「皇族のような活動」をすることにより、平穏な生活が害されることも予想される。
 宮邸の提供や、日常生活における警備などの面で、皇族とは異なる扱いとなると考えられ、元女性皇族にとっては、正規の皇族よりも不利な立場に置かれることも想定される。
 元女性皇族には、このような事情を理解した上で、当該「国家公務員」に就任するか否かについて、選択の自由を付与することが不可欠である。その結果、「国家公務員」の担い手が誰もいないという事態も予想されるところである。
スポンサーサイト



| 皇族数の確保 | 23:25 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑ 

≫ EDIT

婚姻後の女性皇族のお立場をめぐる最近の議論について①

 一部報道で、政府が、皇族の減少問題への対応策として、女性皇族が結婚で皇籍離脱した後も、国家公務員として公的立場から皇室活動に当たる案(以下「国家公務員案」という。)などを中心に検討を進めていることが報じられている。

 平成24年には、皇族数の将来的な減少に対処し、皇室活動の維持を図るため、女性皇族が婚姻すると皇族の身分を離れることとされている現行皇室典範の見直しに向けた検討が行われたところであるが、現安倍内閣においては、その先の検討が進んでいない状況にある。このような中、桂宮殿下の薨去(平成26年6月)、典子女王殿下の御結婚の予定(平成26年10月)に伴い、皇族数はこの1年で2方減少し、計20人となることが確実となっており、皇族数の減少への対処方策の検討は、一層緊要性を増しているところである。

 このような中報じられた国家公務員案は、平成24年10月に内閣官房が発表した「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」(以下「論点整理」という。)において、Ⅱ案として示されていた案であるが、これは、皇位継承資格のあり方について直ちに影響を生じさせない方策であることを専らの論拠とするものであると言える。すなわち、国家公務員案では、女性皇族は婚姻により皇籍を離れるため、その子孫が皇族となる可能性は絶たれることから、歴史上前例のない「女系皇族」を誕生させ、ひいては当該皇族が皇位を継承して「女系天皇」となるといった懸念が生じない。

 しかし、国家公務員案については、第一に、この方策単体では皇族数(皇位継承者を含む。)の減少には対処できないこと第二に、皇室活動の担い手を確保するという目的に照らしても根本的に不十分な内容であることから、不適当であると言わざるを得ない。

 国家公務員案は、当然ながら皇族数の減少は回避できないことから、結果として皇位継承資格者の不足を生じさせ、将来的に皇位継承資格者のあり方に関する議論が不可避となることが考えられるが、この案は、一般的に、「男系男子」による皇位継承の絶対維持を主張する立場から論じられる考え方であり、皇位継承者又は皇族数の確保方策としては、いわゆる「女性宮家」の創設は認めず、旧皇族の復帰を主張する考え方と親和性が高い。

次回、より具体的に「国家公務員案」の問題点について指摘していきたい。

(参考1)皇籍離脱後も活動可能に=女性皇族の在り方検討-政府(平成26年6月29日時事通信)
 政府が女性皇族について、結婚して皇籍を離れた後も皇室活動を継続できる方向で位置付けを見直す検討に入ったことが28日、関係者の話で分かった。皇族が減少する中、皇室活動を安定的に維持するのが目的。安倍政権下で議論は停滞気味だったが、高円宮家の次女典子さまの婚約内定が契機になったとみられる。
 野田前政権では「女性宮家」創設に関する論点整理をまとめ、パブリックコメント(意見公募)を実施したが、反対意見が大多数を占めた。安倍晋三首相も昨年2月のBS番組で「皇統の継承は男系でつないでいくと皇室典範に書いてあり、女性宮家はそういう役割を担うことができない」と語るなど批判的な立場だ。
 このため今後の検討では、論点整理で併記された、国家公務員として公的立場から皇室活動に当たる案が軸になりそうだ。この場合、「皇室輔佐(ふさ)」や「皇室特使」などの新たな称号を保持することが想定されている。
 皇室典範12条は、女性皇族が民間人と結婚した場合、皇族の身分を離れることを定めている。桂宮宜仁さまが8日に亡くなられ、現在の皇室は天皇陛下と皇族方の21人となった。このうち8人が未婚女性で、結婚によりさらに人数が減る可能性があり、皇室活動に支障が出るとの懸念が増している。

(参考2)皇族減少で対応検討=菅官房長官(平成26年6月30日時事通信)
 菅義偉官房長官は30日午後の記者会見で、皇族の減少問題への対応について、「事務方に命じ、政府内で検討している」と明らかにした。皇室活動を安定的に維持するのが目的。政府は女性皇族に関し、結婚して皇籍を離れた後も皇室活動を継続できる仕組みの導入などについて、具体策の検討に着手している。
 8日に桂宮宜仁さまが亡くなられたことで、皇室は天皇陛下と皇族方の21人にまで減少した。皇室典範は、女性皇族が民間人と結婚した場合は皇族の身分を離れることを定めており、さらに減る可能性もある。
 このため政府は、女性皇族が結婚で皇籍離脱した後も、国家公務員として公的立場から皇室活動に当たる案などを中心に検討を進める。

(参考3)日本会議、女性皇族のあり方について議論 女性宮家創設は否定(2014年6月9日産経新聞)
 日本会議国会議員懇談会(会長・平沼赳夫日本維新の会国会議員団代表)は9日、国会内で皇室のあり方を考える「皇室制度プロジェクトチーム」(座長・衛藤晟一首相補佐官)の初会合を開き、百地章・日本大法学部教授が女性皇族のご活動に関して講演した。
 公務などで女性皇族のご活動の幅が広がるなか、女性皇族が結婚で皇籍を離れられ、皇族が減少することが危惧されている。百地氏は、女性宮家の創設に否定的な見解を示した上で、元女性皇族が民間人や特別公務員として公務を続けられるような制度設計の必要性を説いた。衛藤氏は会合後、記者団に「政府にも検討の機会がつくられると思う」と述べた。

| 皇族数の確保 | 11:23 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑ 


| PAGE-SELECT | NEXT